カビを利用する産業は、わが国古来の醸造物や食品の製造、多くの化学物質や医薬品など多岐にわたっており、これらの産業のほとんどはカビの生活に伴う生理作用をきわめて巧みに利用しているもので、世界における応用微生物先進国の中にあって、わが国は抜きん出たレベルに位置しています。
わが国がカビの利用にかけてなぜ世界の最先端を走るかというと、そこには古くからわが国の食文化を支えてきた醸造技術の伝統にその要因をみることができます。1000年も前に麹カビを使った酒造が興り、味噌、醤油業が栄え、甘酒、漬物が嗜好されはじめた時から今日に至るまで、日本人の先達者はあきることなく、飲んでは旨く、食して美味な高度な味を麹菌の選択や麹の製造法に求めてきた歴史があるからです。麹菌は我国の食文化の原点に位置する微生物であり、桜が国花、薙が国鳥であるならば麹菌はまさに国を代表する微生物であり、「国菌」と呼ぶにふさわしいものです。その伝統は今日の分子生物学や遺伝子工学を中心とするバイオテクノロジーの分野でも、大きな武器となっています。
このように、わが国の微生物産業を今日これほどまでに発達させてきた背景のひとつともなった麹菌、その種菌(種麹菌)を生産して全国の醸造元はもちろん、海外のユーザーに直送販売している全国でも珍しい企業が株式会社秋田今野商店です。
創業以来「技術が資本」を合い言葉に多くの優良種麹・酵母・乳酸菌・酵素剤等を醸造界に供給し続けており、近年は醸造食品微生物以外の生物農薬原体や健康食品素材・化粧品原体の分野にも力を入れております。
社是は「温古知新」(古きを温め、新しきを知る)。「温」とは肉をとろ火で炊き詰めてスープをつくること。歴史に裏付けられた科学の知識や先人の知恵をじっくりと煮詰め、さらに新しい創造を加えて一歩前に進むことを心掛け微力ながら社会に役立つよう努力していきたいと思っております。