秋田今野商店

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第111回

第111回 2019年3月3日

[温故知新]秋田美人と麹の力 今野宏(寄稿)

 ◇秋田今野商店社長

 今回は秋田美人と麹のかかわりについてお話ししましょう。
 秋田美人の白くきめ細かな肌は、低温多湿な環境や紫外線量の少なさ、遺伝的資質等によるものと言われています。これに加え日常の食生活が美肌をつくることが知られてきました。
 その一つが麹菌のつくる麹酸です。研究のきっかけは「麹づくりをする杜氏の手は白くなる」と言われていることでした。肌の色を黒くするメラニンはチロシナーゼという酵素の働きで作られます。麹酸にはこのチロシナーゼを阻害する作用があります。またメラニンの色を薄くする働きもあるのです。実際、麹酸を加えた水槽でデメキンを飼うと明らかに色が薄くなってきます。
また麹はエルゴチオネインという強力な抗酸化作用を持つ物質も作り、その抗酸化力はビタミンEの約7000倍もあります。これにより医薬品や化粧品への利用が進んでいます。さらにエルゴチオネインは肌の張りや弾力を保つエラスチンを守り、麹酸と同様にシミの原因になるチロシナーゼの働きを阻害します。実はこのエルゴチオネインは、茸類や麹菌、酵母など一部の微生物にしかつくれないのです。
 日本の中で秋田県ほど食生活に麹を取り入れてきた所はありません。秋田の先達は飽きることなく飲んでは美味く、食しては美味な高度な味を麹に求めてきたのです。麹を多用した伝統発酵食品を食べてきた人生ベテランの女性の肌の美しさは他県から来た方々を驚かせます。やはり麹発酵食品は美肌の鍵なのかもしれません。
 私のコラムは今回が最終回となります。長い間ありがとうございました。

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